空き家ビジネスの話題!

国内住宅の40%が空き家になる? それでも「空き家ビジネス」が難しい理由

 

 

 

 

 

●消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方:

日々刻々と変化する市場の中で、ある企業は成長を遂げ、またある企業は衰退していく。これらの“差”を生みだす要因とは。20年以上にわたって消費トレンドと企業戦略の関係について分析してきたJMR生活総合研究所による連載をお届けします。

【グラフ】空き家はこれほど増えている

 日本中で、人が住んでいない「空き家」が増えている。

 総務省の調査によると、全国の空き家は2013年時点で820万戸と、国内住宅全体の13.5%を占めている。その数は今後も増えるとみられ、2040年には空き家率が40%超になるとの試算もある。

 この問題の解消に向け、政府はさまざまな施策を打ち出している。もちろん民間企業も黙ってはいない。空き家の増加をチャンスととらえ、不動産売買や管理、民泊サービスなどを展開し、ビジネス拡大を狙う企業が続出している。

●なぜここまで…… 空き家激増の“隠れた要因”

 なぜ空き家がここまでのハイペースで増え続けているのか。その背景には、単なる人口減少だけでなく、いくつかの“隠れた要因”がある。

 まず挙げられるのは「新規物件の止まらない供給」だ。2005年以来、日本の国内人口は減少している。必要な家の数が減っている一方で、新築物件の供給は変わらず続いているのだ。

 「地方在住者の都心移住」も、空き家の増加を後押ししている。JMR生活総合研究所が昨年行った調査によると、地方や郊外には都心移住を考えている人が多かった。地方では今後、空き家がますます増えていく可能性がある。

 もう1つ大きな要因として挙げられるのが、固定資産税の問題だ。日本では、土地に家屋が立っている場合、たとえそれが空き家でも住宅用地特例(住宅用に使われている土地の税金を軽減する措置)が適用され、固定資産税額が“さら地”の6分の1になる。しかし、ひとたび解体すると特例が適用されなくなり、空き家だったころと比べて課税額が6倍に上がってしまうのだ。この状況であえて「解体しよう」と考える人は多くないだろう。

 また、そもそも所有者が家屋を処分する意思決定をできないケースも多い。

 例えば、世帯主が老人ホームで介護を受けている場合など、本人が存命中のため第三者が手を付けられないケースが考えられる。世帯主が死亡しても、共同相続で権利関係が複雑になることもある。このように「処分する」といった意思形成がしづらくなり、放置状態になってしまうケースがままあるのだ。

●加速する「空き家ビジネス」 その3つの業態とは

 だが、管理が行き届いていない空き家が増えると、地域の景観を損ねるだけでなく、倒壊や火災のリスクが高まったり、害獣や害虫が繁殖して衛生環境が悪くなったり、犯罪者のたまり場になったり――と、周辺地域住民に与える害も大きい。

 そのため、国や自治体は空き家対策に力を入れ始めている。その一例を紹介しよう。

1.空き家に対する税制優遇措置の撤廃

 2015年施行の「空き家対策特別措置法」では、隣接地に危険が及ぶ場合など「自治体が定めた特定の空き家」に対する固定資産税の優遇を廃止。また、所有者が自治体の是正勧告を無視する場合、取り壊し費用を所有者負担にできるようになった。

2.減税や補助金

 これまで、空き家の買い取りや再販は通常の不動産売買より税負担が重く(事業者が中古住宅を買い取る際に不動産取得税が掛かり、事業者が改修した住宅を販売する際には登録免許税が掛かる)、それが空き家の処分を阻む一因になっていた。

 そこで、政府は2014年に登録免許税を0.3%から0.1%に引き下げ、2015年には不動産取得税を減税する特例措置を導入。一部の自治体では、空き家改修費を補助するといった動きもある。

3.「民泊」の規制緩和

 2015年の訪日外国人は過去最多の1974万人に達した。その影響で、都心を中心に宿泊予約が取りづらくなったり、宿泊費の高騰を招いたりしている。

 政府は民間の空き家や空き部屋の活用を目指し、東京・大阪などの国家戦略特区に限って、7~10日以上の宿泊等の条件付きで、旅館業法の適用除外とする“民泊”を認めている。

 こうした政府や自治体の動きに後押しされ、さまざまな業界で“空き家ビジネス”が生まれつつある。大きく分けると以下の3つだ。


1. 空き家貸し出しビジネス
2. 空き家買い取り/再販ビジネス
3. 空き家管理/メンテナンスビジネス

 まず大きく伸びているのは、空き家貸し出しの一種ともいえる「民泊ビジネス」だ。空き部屋の貸し手と借り手のマッチングサービス「Airbnb」の国内登録物件は1万6000件に上るといい、市場の火付け役となっている。

 従来、民泊は旅館業法上で“グレーゾーン”だったが、国家戦略特区の設置で法律問題がクリアになった地域もあり、国内事業者の参入も増えている。

 例えば、大京グループの大京穴吹不動産は昨年末、オーナーが活用できていない分譲マンション(同社管理物件)をリフォームし、1カ月単位で貸し出すサービスを沖縄県で始めた。今後は沖縄だけでなく、東京や大阪などの国家戦略特区にも拡大する方針だ。2016年には、羽田空港へのアクセスが良い大田区の空き家約100戸を買い取ってリフォームし、外国人観光客向けに貸し出す計画もある。

 貸し出しほどではないが、空き家の買い取り/再販ビジネスも拡大している。例えば、カチタス(群馬県桐生市)やフジ住宅(大阪府岸和田市)などの中古住宅事業者は、一戸建ての隠れた欠点やきずを発見する高度な検査(インスぺクション)ノウハウを持ち、その強みを生かしている。

 空き家の見回りや清掃、遺品整理などを代行するサービスも盛り上がりつつある。所有者が空き家をなかなか処分できず、遠方に住んでいるなどの理由で見回るのが難しいケースも多いが、放置すれば自治体から警告される。その対策としてメンテナンス代行サービスに注目が集まっているのだ。

 こうした空き家管理/メンテナンスサービスを提供しているのは、地域の中小の不動産業者や警備会社、物流会社など。異業種を含めて多くの企業が参入している。

 清掃や遺品処理などは、きめ細かい作業が求められ、手間が掛かる。大企業が行おうとしても利益率が悪くなりがちだ。しかし、これをきっかけに信頼関係が築ければ、将来空き家を処分する際に、利幅の大きい不動産売買の手数料収入につながる可能性もある。そのため、東急リバブルや三井不動産リアルティ、住友不動産販売などの大手不動産仲介業者も次々と参入している。

●日本特有? 空き家ビジネス拡大を阻む壁

 一方、空き家ビジネスの拡大に向けてはいくつか課題も指摘されている。

 1つ目は、日本の空き家を含めた中古住宅の質の悪さだ。

 欧米では「家は使う込むほど価値が高まる」と言われるほど、住宅を何世代にもわたってメンテナンスしながら使う文化がある。リフォームの際は、将来の売却価値まで考慮するなど、不動産価値を維持・向上させることに居住者の関心も高い。

 しかし、日本では新築時が最も価値が高く、およそ20年でその価値はゼロになるとされている。一代限りの「使い捨て」が前提で、不動産の価値を維持・向上させる意欲は低い。その結果、日本の市場で売りに出される空き家は欧米に比べ、質が悪いものが多い。

 使い捨てを前提に住む人が圧倒的多数を占める日本では、従来は中古住宅を売りに出すことも少なかった。一戸建て住宅の隠れた欠点の検査ノウハウを持つ人材も、まだまだ不足している。

 そのため、空き家購入を考える人も、隠れた欠点を確認する手間やコストが掛かりすぎている。特に、欠点を発見しにくいとされる一戸建てでそのデメリットが大きい。

 また、そもそも空き家が増えている地域は経済が衰退していて仕事がなかったり、人口減少で地域コミュニティーが崩壊していたりするケースが多い。その場合、地場産業の活性化やコミュニティー再生をセットにして提供できないと、空き家も結局売れなくなってしまう。

 以上は空き家の買い手や借り手の立場から見た課題だが、裏返せば、空き家の売り手や貸し手にとっての課題でもある。

 持っている空き家をせっかくリノベーションしたとしても、借り手が現れるかどうかや、どの程度の価値を認めてくれるかが読めない――という点は、空き家の共同相続人の間で処分の仕方を合意しにくくしてしまうのだ。

●空き家ビジネス成長のカギは?

 しかし、今後ますます空き家が増えていく状況を考えれば、空き家ビジネスを活性化させる必要がある。そのためには何が求められるのか。

 まず考えられるのは、個々の事業者が空き家情報を“独占”する形での仲介ビジネスを脱し、市場にプラットフォームの思想を取り入れることだ。

 空き家を扱う不動産仲介業者はこれまで物件情報を独占し、それを武器に売り手・買い手の双方から手数料を取って成り立ってきた。しかし、それは売り手と買い手にとって利便性の低下やコスト増大を招く。取り引き意欲が減退しがちな空き家ビジネスでは、その弊害はとりわけ大きい。

 これを防ぐためにも、売り手・買い手の利便性を優先する「空き家取り引きプラットフォーム」が必要だ。その仕組みは、例えば以下のようなものだ。

・仲介業者が異なる場合でも、全ての空き家物件を買い手が比較できる
・全ての仲介業界で項目が統一された検査情報や、住宅メンテナンス情報を基に物件を比較できる

 これと並行して、空き家の売り手をサポートする仕組みづくりも求められる。売り手にとっては、空き家の処分前から処分時、処分後まで、解決すべきことが山積みだからだ。

 例えば処分前は、不動産価値を維持しながら売却時期を見極める必要があるし、処分時には親族や売り手と交渉する必要がある。処分後も、その後住む家のための資金をどうするかといった課題がある。

 多くの悩みを抱える売り手をサポートすべく、住友不動産販売では、空き家の処分が決まるまで維持や管理を代行する「ステップ空家巡回サービス」と、処分の際に専門スタッフに相談できる「ステップ相続診断サービス」をセットで提供している。

 三井不動産リアルティは1月、不動産売買の売り主と買い主を総合的にサポートする新サービス「三井のリハウス360°サポート」をスタートした。また、ミサワホームは空き家に特化した相談窓口を設置。空き家の賃貸・売却やフォーム、メンテナンス、相続、資産活用相談など、グループの総合力を生かしてサービスを提供している。

●空き家ビジネス大競争時代 求められるのは「グランドデザイン」

 今後はサポートが充実した仲介業者に空き家の売り手が集中し、競争が一層激しくなると見込まれる。

 ただし、もし空き家に引っ越しても生活に支障をきたすようでは、買い手は現れない。

 買い手にとって重要なのは移住後の生活だ。例えば、単身シニアが安心して暮らせるようなコミュニティーや、小売雑貨店や病院などの生活インフラ、バスや乗り合いタクシーといった交通インフラを整えるほか、企業を誘致して雇用を生み出すといった施策も求められる。

 観光客向けに空き家を貸し出すビジネスの場合も同様だ。魅力のある地域でなければ、客は当然リピートしない。この対策例として、大京穴吹不動産は、貸し出すマンションの近隣飲食店と連携したサービスや、近畿日本ツーリストグループと共同で長期滞在のメリットを生かした旅行プランの提供などに沖縄で取り組んでいる。

 空き家仲介ビジネス業はこれから、空き家という「モノ」を仲介するビジネスから、地域社会や経済全体のグランドデザインを描き、提供するビジネスに変革していくことが求められるだろう。

 空き家取り引きの総合プラットフォームが登場して普及すれば、不動産業者が得る仲介手数料収入は今後ますます減ることになる。これは空き家に限らず、中古物件全体を巻き込んだ動きになる可能性もあるだろう。

 それに備えるためにも、不動産仲介業は事業を再定義し、売り主・買い主のよろずサポートビジネスや、地域のグランドデザインを描いて提供するようなビジネスなど、多種多様なビジネスの種をまくことが求められている。

●著者プロフィール

小林宏光(こばやし・ひろみつ)

株式会社JMR生活総合研究所でプロジェクト・マネジャーとして、自動車や電機、サービス業界などの事業戦略の策定・実行支援を主に担当している。理論と事例、データ分析を駆使して、企業の戦略課題の解決に精力的に取り組む。

JMR生活総合研究所

市場リサーチや顧客企業への戦略コンサルティングのほか、マーケティング情報サイト「J-marketing.net」を運営。マーケティングや戦略経営に関する豊富な記事を無料会員向けに提供している。

 

 

 

 

 

 

 

 

引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160425-00000042-zdn_mkt-bus_all